子どもに教えられる算数 — 🔢 数の性質編 / 第5章(全12章)

➗ 分数計算

「分数の割り算はなぜひっくり返してかけるの?」は、大人が一番答えに詰まる質問の代表です。約分・通分の原理から積み上げて、この質問に2通りの説明で答えられるようにします。

小5年〜

約分・通分は「分母と分子に同じ数」の原理ひとつ

分数の計算力は、約分と通分のスムーズさでほぼ決まります。 そして約分と通分は、どちらもたった1つの原理の上に乗っています—— 「分母と分子に同じ数をかけても、同じ数で割っても、分数の大きさは変わらない」。 ピザを2倍細かく切って2倍の枚数を取れば、食べる量は同じ、というだけの話です。

約分は最大公約数で「1回で小さく」、通分は最小公倍数に「そろえて大きく」 約分 ← 最大公約数24/36 → (÷12)→ 2/3最大公約数12で割れば1回で終わる÷2、÷2、÷3と小刻みでも正解だが手数が増える通分 ← 最小公倍数1/6 と 3/8 → 4/24 と 9/24分母を最小公倍数24にそろえる分母どうしの積48でも計算はできるが数が大きくなる どちらも第4章のはしご算がそのまま武器になる——章の順番には意味がある
図: 約分と通分の対比。最大公約数・最小公倍数とペアで覚える

実戦のコツは前章とつながっています。 24/36の約分は、÷2、÷2、÷3と小刻みに進めても正解ですが、 最大公約数12で割れば1回で既約分数になります(途中でやめてしまう事故も防げます)。 通分は分母の最小公倍数にそろえるのが最小の手数。 どちらも、はしご算(第4章)がそのまま分数の武器になるのです。

参考: 原書 p.121

小5年〜

分数のたし算・引き算は通分してから

分母が違う分数のたし算・引き算は、「通分してから、分子だけたす」の一本道です。 1/6+3/8なら、分母を24にそろえて4/24+9/24=13/24。 なぜ分母どうしをたしてはいけないのか——分母は「何等分したか」という単位の名前であって、 数える対象ではないからです。「6分の」と「8分の」は単位が違うので、 cmとmをそのまま足せないのと同じく、単位をそろえる(通分する)必要があります。

通分は「目盛りをそろえる」作業——そろえば分子をたすだけ そのまま — 目盛りの幅がちがうので足せない1/21/31/2 の1目盛りと 1/3 の1目盛りは大きさがちがう → 分子をたせない通分 — どちらも6等分の目盛りに直す= 5/63/62/6目盛りの大きさがそろったので、3個分+2個分=5個分とたせる 通分=目盛りをそろえる作業。目盛りがそろえば分子をたすだけ
図: 1/2+1/3のテープ図。6等分の共通目盛りに直せば3/6+2/6=5/6と足せる

帯分数のたし算・引き算は2つの道

3と5/7 + 4と4/5のような帯分数の計算には、 整数部分と分数部分を分けて計算する道と、仮分数に直してから計算する道があります。 分けて計算する方が数が小さく済み、速くて確実です(分数部分があふれたら整数に1繰り上げる)。 仮分数方式は確実ですが分子が大きくなりがちで、計算ミスの温床になります。 まず「分けて計算」を本線として教え、つまずいたら仮分数方式を見せる、の順がおすすめです。

参考: 原書 p.127

小6年〜

分数のかけ算で分母どうし・分子どうしをかける理由

分数のかけ算は「分母どうし、分子どうしをかける」——手順は1行ですが、 理由を聞かれると詰まります。答えは面積のタイル数えにあります。

分母どうしの積は「タイルの総数」、分子どうしの積は「使う枚数」 1m(横を3等分)1m(縦を7等分)タイルは全部で 7×3 = 21枚(=分母どうしの積)→ タイル1枚の面積は 1/21 m²たて4/7m・よこ2/3mの長方形(ピンク)はタイル 4×2 = 8枚分(=分子どうしの積) だから 4/7 × 2/3 = (4×2)/(7×3) = 8/21「分母どうし・分子どうし」は面積の数え方そのもの
図: 4/7×2/3のタイルモデル。分数のかけ算の規則は1m²のタイル数えから出てくる

1辺1mの正方形を縦7等分・横3等分すると、7×3=21枚のタイルができ、1枚は1/21m²。 たて4/7m・よこ2/3mの長方形はタイル4×2=8枚分だから8/21m²。 分母どうしの積はタイルの総数(どれだけ細かく切ったか)、 分子どうしの積は使う枚数(何枚分か)——規則そのものが図に書いてあるのです。

参考: 原書 p.132

小6年〜

「ひっくり返してかける」は割る数を1にする操作

「分数の割り算は、なぜひっくり返してかけるの?」—— 大人を最も困らせる算数の質問として、おそらく不動の第1位です。 丸暗記で乗り切った人がほとんどですが、説明の筋は意外なほどシンプルです。 鍵は「÷1なら答えは割られる数そのもの」という当たり前の事実。 つまり、割る数を1に変えられれば勝ちなのです。

🎛️ 「ひっくり返してかける」解体ショー — 割る数を1にする

34 ÷ 25

割る数が 2/5 のままだと計算しにくい。「÷1」なら答えは割られる数そのものになるので、割る数を1に変えたい

ポイントは2つだけ——「割られる数と割る数に同じ数をかけても答えは変わらない」(小数点のダンスと同じ)と、 「逆数をかけると積が1になる」。この2つを組み合わせると「÷分数」が「×逆数」に化ける。

割られる数と割る数の両方に同じ数をかけても答えは変わらない (第3章の小数点のダンスで使った性質)ので、両方に「割る数の逆数」をかけます。 すると割る数は逆数との積で1になって消え、 残るのは「割られる数×逆数」——これが「ひっくり返してかける」の正体です。 2/5で割ることと5/2をかけることが同じだと、変形の途中式ごと見せられれば、 この質問はもう怖くありません。

参考: 原書 p.135

小5年〜

分数⇔小数の変換は「分子÷分母」と位の読み

分数と小数は、同じ量の「2通りの表記」です。着替え方は方向で違います。

分数→小数は「分子÷分母」、小数→分数は「位の読み」 分数1/4「4等分した1つ分」小数0.25「0.01が25個分」分子 ÷ 分母(1÷4=0.25)0.25=25/100 → 約分して1/4 同じ量の「2通りの服」——着替えられると計算の選択肢が倍になる ※ 1/3のように割り切れない分数もある(0.333…)。分数のほうが表現できる範囲は広い
図: 分数⇔小数の双方向変換。どちら向きの変換も理由ごと覚える
  • 分数→小数: 分子÷分母を計算する。1/4=1÷4=0.25(分数の線は「÷」の化身)
  • 小数→分数: 位の読みをそのまま書く。0.25=「100分の25」=25/100→約分して1/4

着替えができると、計算の選択肢が倍になります。 0.25×8なら1/4×8=2と暗算した方が速く、1/3+0.1のような混在問題も どちらかにそろえれば一本道です。 ただし1/3=0.333…のように小数では書き切れない分数もあるので、 「分数のほうが守備範囲が広い」ことも添えておきましょう。

参考: 原書 p.140

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