NVIDIA Vera CPU向けSoCAMM需要は年間30bn Gb超:KISの計算式を日本語で因数分解
韓国Korea Investment & Securities(以下、KIS)が出したNVIDIA Vera CPUに関するコメントに、SoCAMM需要の規模感を一気に押し上げる重要な計算式が入っていた。
結論を先に書くと、こうだ。
- KISはVera 単体 CPUのFY2027市場規模を $20bn と前提
- 1CPUあたりSoCAMM容量を 1,536GB(8スロット × 192GBモジュール)と置く
- すると、Vera単体CPUだけで年間 30.72bn Gb のSoCAMM需要が立ち上がる
- これはCY2026のSoCAMM供給能力 30bn Gb/年 とほぼ同規模
- 一方、NVL72サーバー向けは別途 44bn Gb 必要
- 合算するとCY2027のSoCAMM TAMは約 80bn Gb = スマホ向けLPDDR5の年間TAMにほぼ匹敵
LPDDR5、ひいてはDRAM全体の不足は、この先さらに深刻化する側に振れるというのがKISのメッセージだ。
以下、Vera CPU向けSoCAMMとは何か、そして計算式をどう因数分解しているかを順に追う。
そもそもSoCAMMとは何か
最初に整理しておきたい。SoCAMMはMicron主導で立ち上がった、AIサーバー向けの新しいLPDDR5メモリモジュール規格である。
下の写真はMicronの SoCAMM2 / LPDDR5X 製品ショット。NVIDIAのGPU(中央のシルバーパッケージ)に密接する形で、SoCAMM2スティックが平置きで4枚並んでいるのが分かる。

ポイントだけ押さえる。
- 構成:薄い基板(PCB)の上にLPDDR5XのDRAMチップを複数枚載せ、下端の金属端子(ピン)でマザーボードに刺さる
- 位置づけ:データセンター向けLPDDRをモジュール化する規格。HBMの大容量を補完するメインメモリ層を担う
- 採用先:NVIDIAのVR NVL72(Vera Rubin世代)、そして今回話題のVera 単体 CPU
質問にあった「これはMicronのSoCAMMですか?」への答えは、その通り。Micronが主導するSoCAMM2モジュールで、DRAMはLPDDR5X。NVIDIAのGB200/GB300以降のシステムが大口採用先になる。
KISの計算式を日本語で因数分解する
KISのコメントは英語で短くまとまっているが、実は4ステップの掛け算・割り算で出来ている。これを日本語で1枚に整理した。
順番に追う。
ステップ1:Vera CPU台数を出す(市場規模 ÷ ASP)
- 市場規模:$20bn(NVIDIAがコールで言及したVera単体CPUのFY2027市場見通し)
- ASP:**
8,000**(Grace CPUの3,000〜5,000 に対し、後継Veraはエージェントワークロード最適化でASPが上がるとKISが想定。レンジ上限の5,000〜$8,000 のうち上限を採用)
20bn ÷ 8,000 = 2.5百万台(2.5mn)
ここはASP前提が動けば台数も動く。$5,000で計算すれば 4mn台になる。KISは「上限を採用してもなおこの需要規模」という保守的な見せ方をしていると読める。
ステップ2:1CPUあたりのSoCAMM容量を出す(スロット数 × モジュール容量)
ここは、NVL72で観測されている構成をVera単体販売にもそのまま当てはめるという強めの仮定が入る部分だ。
- スロット数:8本/CPU(NVL72のVera CPU 1個あたりに刺さるSoCAMMの数)
- モジュール容量:192GB/枚(SoCAMM2 / LPDDR5Xの想定容量)
8 × 192 = 1,536GB/CPU
KISはここで「Vera単体販売がNVL72と同じSoCAMM容量を載せるかは未確認」と明示的に断っている。仮にVera単体販売向けがNVL72より少ない容量で出れば、需要は等比で縮む。ここは前提のうち、もっとも振れ幅が大きい。
ステップ3:年間Gb需要を出す(台数 × 容量 × 8)
- 台数:2.5mn
- 容量/CPU:1,536GB
- 単位換算:1GB = 8Gb(メモリ業界は Gb 単位で需給を語る)
2.5mn × 1,536GB = 3.84bn GB 3.84bn GB × 8 = 30.72bn Gb/年
これがVera単体CPU向けだけのSoCAMM需要試算となる。
ステップ4:供給能力・NVL72需要との比較
| 項目 | 規模 |
|---|---|
| 年間SoCAMM供給(CY2026・大手3社合算) | 30bn Gb |
| Vera単体CPU需要(FY2027) | 30.72bn Gb |
| Vera + VR NVL72 合算 | 30.72 + 44 = 74.72bn Gb → 約 80bn Gb |
- Vera単体だけで、供給能力をほぼ食い切る
- そこにNVL72向け(CY2027で100,000サーバー × 192GBモジュール換算で 44bn Gb)が乗る
- 合算 約 80bn Gb は スマホ向けLPDDR5の年間TAMにほぼ匹敵する規模
スマホ業界が1年間に消費するLPDDR5の総量と、NVIDIAのAIサーバーが1年間で必要とするLPDDR5の総量が、ほぼ同じスケールに乗ってくるというのがKISの言いたいことの中核だ。
原文の日本語訳(KISコメント本体)
以下はKISがNVIDIAのカンファレンスコールを受けて出したコメントの日本語訳。本記事の計算式分解は、このテキストを4ステップに展開したものになる。
本日のカンファレンスコールで、NVIDIAは、Vera単体CPU市場がFY2027に $20bn に達する見込みだと述べた。
Grace CPUの単価は
3,000〜5,000 程度と推定される。VeraはGraceの後継であり、AIエージェント型ワークロード向けに最適化されていることから、Veraは1台あたり5,000〜8,000 のより高いASPを持つと想定する。Vera CPUのASPを
8,000** と仮定すると、**20bn の市場規模は 2.5百万台のCPU に相当する。Vera単体CPU販売に、NVL72と同じSoCAMM容量が載るかは依然として不明である。ただし、同等容量が適用されると仮定すれば、各Vera CPUは 8本のSoCAMMスロット を持つ。1モジュールあたり 192GB とすれば、Vera CPU 1台あたりのSoCAMM容量は 1,536GB になる。
よって、FY2027のVera CPU向けSoCAMM需要は、 2.5百万CPU × 1,536GB = 3.84bn GB = 30.72bn Gb となる。
CY2026(NVIDIAのFY2027とほぼ重なる)におけるSoCAMM供給は、DRAM大手3社合算で 30bn Gb と推定される。したがって、NVIDIAのVera単体CPU販売とVR NVL72販売からのSoCAMM合計需要は、年間供給能力 30bn Gb を既に上回る見込みだ。
当社の前回の詳細レポートでは、CY2027のVR NVL72出荷を100,000サーバーと仮定し、192GBモジュール前提でSoCAMM TAMを 44bn Gb と試算した。Vera単体CPU販売による追加のSoCAMM需要を加えると、CY2027のSoCAMM TAMは 80bn Gb を超える 可能性がある。
年間 80bn Gb のLPDDR5は、スマートフォン向けLPDDR5の年間TAMにほぼ匹敵する規模である。
LPDDR5の不足、そしてDRAM全体の不足は、時間の経過とともにさらに激しさを増す可能性が高い。
何が示唆されているか
KISの試算が示しているのは、「AIサーバー向けLPDDR5の需要が、スマホLPDDR5市場と並ぶ規模に立ち上がる」 という供給サイドへの強い圧力だ。
- DRAM大手3社(Samsung、SK hynix、Micron)のSoCAMM供給キャパは、Vera単体CPU向けだけで埋まる
- NVL72分は別計算で 44bn Gb 必要
- スマホ需要も従来通り続く
この3つが同じLPDDR5ライン上で奪い合いになる。仕様確定や歩留まり次第で数字は動くが、構図そのものはシンプルだ。スマホ需要の上にAIサーバー需要を「足し算」する形になり、供給が一気に逼迫する。
NVIDIAが Vera 単体CPUまで $20bn 市場を見せてきた時点で、SoCAMM/LPDDR5の需給見通しはレベルが1段変わったと読むのがKISの立場である。
補足:本記事の前提の振れ幅
最後に、計算式の前提条件をどう揺らすと数字がどう変わるかを整理しておく。
| 前提項目 | KIS採用値 | 振れ方 | 影響 |
|---|---|---|---|
| Vera CPU ASP | $8,000 | $5,000まで下振れ | CPU台数が 2.5mn → 4mn に増え、需要はむしろ増える |
| 1CPUあたりスロット数 | 8本 | 4本に減 | 需要は半減(15bn Gb 台に) |
| モジュール容量 | 192GB | 128GBに減 | 需要は2/3に縮む |
| Vera単体販売向けSoCAMM容量 | NVL72と同等 | NVL72比少 | 需要は等比で縮む |
KISが慎重に「NVL72と同じ容量が載るかは不明」と注釈を付けているのは、ステップ2の前提次第で全体規模が大きく変わるからだ。とはいえASPを下振れさせると台数が増えてオフセットされるので、レンジで見ても Vera単体CPU向けだけで年間SoCAMM供給能力に並ぶ需要が出る という大枠は崩れにくい。
LPDDR5の供給制約は、AI投資サイクルとスマホ需要の谷/山にかかわらず、構造的にタイトな状態が続きそうだという見立てになる。