わかりやすい不動産登記簿の見方・読み方 — 第1章(全8章)

📖 総論 — 登記簿ってなに?

登記簿は土地と建物の「プロフィール帳」。表題部・甲区・乙区の3階建て構造と、早い者勝ちの順位ルール、誰でも取れる登記事項証明書までを一気につかむ。

出典: 『わかりやすい不動産登記簿の見方・読み方(6訂版)』日本法令(p.16〜35)。記録例は原本の帳票レイアウトを再現しつつ、内容を正規化データで管理している。

凡例: 記録例の中の下線は「抹消事項」=後の登記で効力を失った記録(登記簿は消さずに線を引いて歴史を残す)

登記簿は国が管理する「土地と建物のプロフィール帳」

日本では、土地1つ・建物1つごとに、国(法務局)がプロフィール帳を1冊ずつ作って管理しています。 これが登記簿です。昔は紙の帳簿でしたが、今はすべてコンピュータに記録されていて、 この記録のことを登記記録と呼びます。

なぜそんな帳簿が必要なのでしょうか。土地や建物は、財布やゲーム機と違って「持ち歩いて見せる」ことができません。 「この土地はぼくのものだ」と言い張る人が2人いたら、どちらが本当か見た目では判定できない。 そこで国が公式の記録を作り、だれでも見られるように公開することで、 安心して売り買いできるようにしているのです。

プロフィール帳は3階建て

登記記録は、大きく表題部権利部に分かれ、 権利部はさらに甲区乙区に分かれます。つまり3階建ての構造です。

表題部
権利部:(甲区) 所有権に関する事項
権利部:(乙区) 所有権以外の権利に関する事項
図: 登記簿の構成(書籍 p.2)

これをやさしく言いかえると、こうなります。

読み方のコツを先にひとつ。登記簿では、古くなった記録も消しゴムで消さずに残し、 下線を引いて「もう効力がない」ことを示します。 下線だらけの登記簿は「持ち主や担保が何度も入れ替わった歴史のある不動産」ということです。

表題部 — 「このモノはなに?」の自己紹介

表題部には、その土地・建物を特定するための情報と、客観的な状態が記録されます。 人間でいえば「名前・住所・身長・体重」にあたる部分で、権利の話はまだ出てきません。

土地の表題部

まずは原本の見た目そのまま。登記事項証明書を取るとこういう帳票が出てきます。 「調製」「筆界特定」の欄に印字されている「余白」は空欄という意味の印字で、 地積の小数部は小数点を打たずに少し離して書く、という独特の作法があります。

表 題 部(土地の表示)調製余白不動産番号0123456789012
地図番号A11-1筆界特定余白
所 在甲市乙町二丁目余白
① 地 番② 地 目③ 地 積 ㎡原因及びその日付〔登記の日付〕
13番7宅地33000不詳〔令和○年○月○日〕
所有者甲市乙町二丁目1番5号 甲 野 太 郎

同じ内容を「項目・記録内容・やさしく言うと」に分解すると、こうなります。

土地の表題部(記録例1)

項目記録されている内容やさしく言うと
不動産番号 0123456789012(13桁の数字)土地1つずつに付くマイナンバーのような識別番号
所在 (しょざい)甲市乙町二丁目どの町にあるか
地番 (ちばん)13番7土地につけた番号。住所(住居表示)とは別物
地目 (ちもく)宅地土地の使いみち。宅地・田・畑・山林など
地積 (ちせき)330.00㎡土地の広さ
原因及びその日付 不詳〔令和○年○月○日〕この土地が登記簿に載った理由と日付。昔からある土地は「不詳(わからない)」が多い
所有者(表題部所有者) 甲市乙町二丁目1番5号 甲野太郎最初に登録したときの持ち主。甲区に所有権の登記がされると下線が引かれる

つまずきやすいのは地番と住所(住居表示)は別物という点です。 ふだん使う「○丁目○番○号」は郵便や訪問のための住所で、登記簿の地番とはズレていることが多い。 登記簿を取るときは、住所ではなく地番で探します。

建物の表題部

建物の表題部(記録例2)

項目記録されている内容やさしく言うと
不動産番号 0123456789013(13桁の数字)建物にも土地と別の識別番号が付く
所在 甲市乙町二丁目 13番地7どの土地の上に建っているか
家屋番号 (かおくばんごう)13番7建物につけた番号。ふつうは敷地の地番と同じ番号になる
種類 (きょたく)居宅建物の使いみち。居宅=住むための家
構造 木造亜鉛メッキ鋼板・かわらぶき2階建何でできていて、屋根は何で、何階建てか
床面積 (ゆかめんせき)1階 115.70㎡ / 2階 99.17㎡各階の床の広さ
原因及びその日付 令和○年○月○日新築〔令和○年○月○日〕いつ建てられたか(新築の日)と、登記した日
附属建物 (ふぞくたてもの)符号1 物置 木造亜鉛メッキ鋼板ぶき平家建 13.22㎡母屋とセットの物置や車庫。同じ登記記録にまとめて書く
所有者(表題部所有者) 甲市乙町二丁目1番5号 甲野太郎所有権の保存登記がされると下線が引かれる

建物には「種類(何に使う建物か)」「構造(何でできているか)」「床面積(各階の広さ)」が記録されます。 物置や車庫のような附属建物も、母屋とセットで同じ登記記録に書かれます。

マンション(区分建物)はプロフィール帳が2段重ね

マンションのことを登記の世界では区分建物と呼びます。 マンションは「建物全体」と「自分の部屋(専有部分)」の2つの顔を持つので、 表題部も一棟の建物の表題部区分建物の表題部の2段重ねになります。

一棟の建物の表題部(記録例1・マンション全体)

項目記録されている内容やさしく言うと
専有部分の家屋番号 8-1-101〜8-1-110 / 8-1-201〜8-1-210 / 8-1-301〜8-1-305このマンションに入っている全部屋の番号リスト
所在 ○区○町三丁目 8番地1、8番地22つの土地にまたがって建っている
建物の名称 ○○マンションマンションの名前
構造 鉄筋コンクリート造陸屋根 地下1階付き3階建建物全体の構造
床面積 1階 1000.72㎡ / 2階 1000.72㎡ / 3階 700.03㎡ / 地下1階 700.00㎡マンション全体の各階の広さ
敷地権の目的である土地 (しきちけん)符号1: 8番1 宅地 1000.00㎡ / 符号2: 8番2 宅地 500.00㎡ / 符号3: 9番 雑種地 390㎡マンションが建っている土地のリスト

区分建物の表題部(記録例2・101号室)

項目記録されている内容やさしく言うと
家屋番号 ○町三丁目8番1の101部屋ごとに付く番号
建物の名称 101部屋番号
種類・構造 居宅 / 鉄筋コンクリート造1階建この部屋の使いみちと構造
床面積 1階部分 45.70㎡この部屋の広さ
敷地権の表示 符号1・2: 所有権 1000分の7 / 符号3: 賃借権 50分の1土地を「1000分の7」のように分数で持つ。部屋と土地の権利はセットで売り買いされる
所有者 甲市乙町二丁目1番5号 株式会社甲建設建てた会社が最初の所有者として記録される

ポイントは敷地権です。マンションの部屋を買うと、建物の下の土地も 「1000分の7」のような分数で一緒に持つことになります。部屋と土地の権利を別々に売れないよう セットにしたものが敷地権で、これにより部屋の売買だけで土地の持分も自動的についてきます。

甲区 — 「持ち主はだれ?」の歴史

甲区には所有権に関する登記が記録されます。はじめての登録(保存)、売買や相続による交代(移転)、 そして差押えのような「持ち主の自由を制限する記録」もここに入ります。 原本の見た目はこうです。付記登記(付記1号)の順位番号欄が、親である2番と仕切り線なしでつながっていること、 2番の旧住所に下線(=抹消事項)が引かれていることに注目してください。

権 利 部(甲区) (所有権に関する事項)
順位番号登記の目的受付年月日・受付番号権利者その他の事項
1所有権保存平成20年1月5日
第123号
所有者 甲市乙町二丁目1番5号 甲野太郎
2所有権移転平成23年5月7日
第1200号
原因 平成23年5月6日売買
所有者 ○市○町○番○号 乙川次郎
付記1号2番登記名義人住所変更平成28年6月6日
第1500号
原因 平成28年6月1日住所移転
住所 埼玉県草加市○町○番地
3差押令和4年○月○日
第○号
原因 令和4年○月○日 ○地方裁判所担保不動産競売開始決定
債権者 ○市○町○番○号 株式会社A

* 下線のあるものは抹消事項であることを示す。

同じ内容を「1行 = 1できごと」に分解すると、こうなります。

権利部(甲区)— 所有権に関する事項

  1. 1番所有権保存受付 平成20年1月5日 第123号

    甲野太郎さんが、この建物の「はじめての持ち主」として登録された。最初の1回だけは「保存」という。

    所有者
    甲市乙町二丁目1番5号 甲野太郎
  2. 2番所有権移転受付 平成23年5月7日 第1200号

    乙川次郎さんがこの建物を買って、持ち主が交代した。前の持ち主(1番)の記録は消さずに残す。

    原因
    平成23年5月6日売買
    所有者
    ○市○町○番○号 乙川次郎
  3. 2番 付記1号2番登記名義人住所変更受付 平成28年6月6日 第1500号

    乙川次郎さんが引っ越したので住所だけ書き換えた。持ち主は変わらない。2番の古い住所には下線が引かれる。

    原因
    平成28年6月1日住所移転
    住所
    埼玉県草加市○町○番地
  4. 3番差押受付 令和4年○月○日 第○号

    借りたお金が返せなくなり、裁判所が「この不動産を勝手に売ってはダメ」とロックをかけた。競売の入口。

    原因
    令和4年○月○日 ○地方裁判所担保不動産競売開始決定
    債権者
    ○市○町○番○号 株式会社A

この4枚のカードだけで物語が読めます。甲野太郎さんが建てて(1番)、乙川次郎さんが買い(2番)、 引っ越しで住所を直し(2番の付記1号)、その後お金に困って裁判所に差し押さえられた(3番)。 登記簿の甲区は、その不動産をめぐる持ち主たちのドラマの年表なのです。

乙区 — 「担保のやくそく」の記録

乙区には所有権以外の権利が記録されます。代表は抵当権 (借金のカタとして不動産を差し出す約束)で、ほかに地上権・地役権・賃借権・配偶者居住権などもここに入ります。 原本では「権利者その他の事項」の欄に債権額・損害金・債務者などがまとめて詰め込まれるため、 乙区がいちばん読みにくい場所です。

権 利 部(乙区) (所有権以外の権利に関する事項)
順位番号登記の目的受付年月日・受付番号権利者その他の事項
1抵当権設定平成20年1月5日
第124号
原因 平成19年12月23日保証委託契約による求償債権 平成20年1月5日設定
債権額 金2,000万円
損害金 年14%
債務者 ○市○町一丁目1番1号 甲野太郎
抵当権者 中央区○町二丁目○番○号 ○○保証株式会社
共同担保 目録(て) 第○号
2根抵当権設定平成23年6月23日
第1800号
原因 平成23年5月15日設定
極度額 金3,000万円
債権の範囲 銀行取引 手形債権 小切手債権
債務者 埼玉県草加市○町○番地 乙川株式会社
根抵当権者 ○市○町○番○号 株式会社A
共同担保 目録(と) 第○号

* 下線のあるものは抹消事項であることを示す。

分解すると、各行はこういう構造です。

権利部(乙区)— 所有権以外の権利に関する事項

  1. 1番抵当権設定受付 平成20年1月5日 第124号

    甲野太郎さんが2,000万円の借金の「担保」としてこの不動産を差し出した。返せなければ売られてしまう約束。

    原因
    平成19年12月23日保証委託契約による求償債権 平成20年1月5日設定
    債権額
    金2,000万円
    損害金
    年14%
    債務者
    ○市○町一丁目1番1号 甲野太郎
    抵当権者
    中央区○町二丁目○番○号 ○○保証株式会社
    共同担保
    目録(て) 第○号
  2. 2番根抵当権設定受付 平成23年6月23日 第1800号

    「3,000万円まで」という枠を決めて、その範囲で何度も借りたり返したりできる担保。会社の取引でよく使う。

    原因
    平成23年5月15日設定
    極度額
    金3,000万円
    債権の範囲
    銀行取引 手形債権 小切手債権
    債務者
    埼玉県草加市○町○番地 乙川株式会社
    根抵当権者
    ○市○町○番○号 株式会社A
    共同担保
    目録(と) 第○号

抵当権と根抵当権 — 1回きりの借金か、借り放題の枠か

観点抵当権根抵当権
担保する借金特定の1本(債権額 金2,000万円)枠の中で出たり入ったり(極度額 金3,000万円)
イメージ住宅ローン1本のカタ会社と銀行の「借り放題プラン」のカタ
完済するとその借金が消えれば抹消できる枠は残る(元本確定するまで消えない)

もうひとつ、甲区と乙区をまたいで読む練習をしてみましょう。 乙区1番の抵当権は受付が「平成20年1月5日 第124号」。甲区1番の保存登記は同じ日の「第123号」でした。 連続した受付番号から、建物を登記したその足で、抵当権も同時に設定した (=ローンを組んで建てた)ことが読み取れます。乙区2番の根抵当権(平成23年6月23日)の時点では、 甲区を見ると所有権はすでに乙川次郎さんに移っているので、担保を差し出したのは乙川さんだとわかります。

共同担保目録 — 「セット担保」のリスト

土地と建物をまとめて1本の借金の担保にすることがあります(むしろそれが普通です)。 そのセットの一覧表が共同担保目録です。 登記事項証明書を取るときに「共同担保目録も付けて」と頼まないと付いてこないので注意。

共同担保目録 記号及び番号 (て) 第○号(調製 平成○年○月○日)
番号担保の目的である権利の表示順位番号
1甲市乙町二丁目 13番7 の土地1
2甲市乙町二丁目 13番地7 家屋番号 13番7 の建物1

登記の順位 — 「早い者勝ち」のルール

不動産の権利は、先に登記した人が勝つのが大原則です(民法177条)。 たとえ先に契約していても、登記が後なら他人に「これはぼくのだ」と主張できません。 だからこそ、だれが先かを決める順位のルールが大事になります。

くらべる相手順位の決め方イメージ
同じ区どうし(甲区の1番と2番など)順位番号の若い方が先同じ列に並んだ人の整理券の番号
別の区どうし(甲区と乙区)受付番号の若い方が先法務局全体の通し番号つき受付票

付記登記と仮登記 — 親ガメの背中と席取りの札

付記登記は、すでにある登記(主登記)にぶら下がるメモ書きです。 住所変更のように「中身を直すだけで新しい権利ではない」登記がこれにあたり、 順位は親ガメ(主登記)と同じ扱いになります。甲区の記録例で「2番の付記1号」が 一段下がったカードになっていたのはこのためです。

仮登記は、将来の本登記のために順位だけ先に確保しておく席取りの札です(法105条)。 あとで本登記をするときは、仮登記と同じ順位番号を使います。 行列に先に並んでおいて、あとから本人が来て席に座るイメージです。

登記事項証明書 — だれでも買える「公式コピー」

登記簿の中身は、手数料を払えばだれでも取り寄せられます。 自分の不動産はもちろん、他人の不動産でもOK。 むしろ「買おうとしている物件の権利関係を事前に調べる」ためにある制度です。 法務局の窓口・郵送・オンラインのどれでも請求でき、 管轄外の不動産(例: 川崎市の物件を東京法務局で)も取れます。

コンピュータ化される前の「登記簿謄本・抄本」という呼び名は今も会話に残っていますが、 現在の正式名称は登記事項証明書です。種類は7つあります。

種類記載されている事項やさしく言うと
全部事項証明書登記記録(閉鎖登記記録を除く)に記録されている事項の全部全部入り。過去の持ち主や消された抵当権も載る。迷ったらこれ
現在事項証明書登記記録に記録されている事項のうち現に効力を有するもの「今も生きている」記録だけ。消された分は載らない
何区何番事項証明書権利部の相当区に記録されている事項のうち請求に係る部分「甲区の2番だけ」のように部分指定で取るもの
所有者証明書現在の所有権の登記名義人の氏名または名称及び住所並びに持分「今の持ち主は誰か」だけわかればいいとき用
一棟建物全部事項証明書一棟の建物に属するすべての区分建物の登記記録に記録されている事項の全部マンション全部屋まるごと版
一棟建物現在事項証明書一棟の建物に属するすべての区分建物の登記記録のうち現に効力を有するものマンション全部屋の「今生きている記録」だけ版
閉鎖事項証明書全部事項証明書等についての閉鎖登記記録に係るもの合筆などで閉じられた古い記録を見たいとき用

手数料と「要約書」との違い

登記事項証明書登記事項要約書
手数料1通600円(オンライン請求なら送付520円・窓口受取490円)1登記記録につき500円
登記官の認証文あり(公式の証明書として使える)なし(銀行や役所への提出には不向き)
載っている内容記録の全部または指定部分概要だけ(取得原因・抵当権の利息などは省略)
請求方法窓口・郵送・オンライン、他管轄もOKその登記所の窓口のみ

ちなみに、コンピュータ化のときに紙の登記簿から移記された不動産には 「昭和63年法務省令第37号附則第2条第2項の規定により移記」という呪文のような一文が記録されています。 これを見たら「紙時代からの歴史がある不動産で、効力を失った古い登記は移記のとき省略されている (全部見たければ閉鎖登記簿謄本が必要)」と読みます。

まとめ — 第1章で覚える3つのこと

  1. 登記簿は3階建て。表題部(モノの自己紹介)・甲区(持ち主の歴史)・乙区(担保などの約束)。
  2. 権利は早い者勝ち。同じ区なら順位番号、別の区なら受付番号で先後を読む。下線は「もう効力がない」印。
  3. だれでも見られる。登記事項証明書は他人の不動産でも1通600円で取れる。買う前に読むための帳簿。

この記事の記録例は、書籍の帳票レイアウトをそのまま再現せず、 「1行 = 1できごと」「ラベル+値+やさしい説明」の正規化データ(JSON)から描画する実験を兼ねています。 次章以降(表題部・甲区・乙区の各論)も同じ方式で展開できます。

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