VR200 NVL72ラックは1台約780万ドル:部材費でメモリが+435%、価格上昇の主役に
Morgan Stanley Researchが、NVIDIAの次世代ラックスケール製品 VR200 NVL72 の部材費(Bill of Materials)を1ラックあたり 約7.8百万ドル と試算した。現行 GB300 NVL72 の約4.0百万ドルから、ほぼ倍増する。
内訳を1行ずつ追うと、この倍増を引っ張っているのはGPUではない。メモリだ。メモリ部材費はGB300比 +435%(約5.4倍)。金額の増分で見ても、メモリの増分がGPUの増分を上回る。AIサーバーの原価構造で、メモリが主役の座に近づいている。
部材費の全内訳(GB300 vs VR200)
下表はMorgan Stanleyの推計をそのまま並べたもの。VR200はVera Rubin世代、GB300はGrace Blackwell世代のNVL72ラックを指す。
| 部材 | GB300 | VR200 | 差分 |
|---|---|---|---|
| GPU | $2,520,000 | $3,960,000 | +57% |
| CPU | $180,000 | $180,000 | 0% |
| NVLink Switch chip | $64,800 | $144,000 | +122% |
| Other networking chips | $261,000 | $576,000 | +121% |
| Memory | $373,939 | $2,001,600 | +435% |
| Cooling | $64,610 | $72,080 | +12% |
| Power supply | $57,600 | $76,000 | +32% |
| PCB | $35,100 | $116,730 | +233% |
| ABF Substrate | $11,160 | $20,340 | +82% |
| MLCC | $1,530 | $4,320 | +182% |
| Others | $402,412 | $623,278 | +55% |
| Rack assembly value add | $22,400 | $28,800 | +29% |
| Total | $3,994,551 | $7,803,148 | +95% |
出典:Morgan Stanley Research estimates(Exhibit 3: "We estimate that a single VR200 NVL72 rack will cost ~US$7.8M")。数値は同社の推計値。
価格上昇の主役はGPUではなくメモリ
「AIサーバーの値段はGPUで決まる」というのが直感だろう。確かに金額の絶対値ではGPUが最大の費目で、VR200では396万ドルと総額の半分を占める。
ところが増分で切ると景色が変わる。GB300からVR200への総額増分は約381万ドル。その内訳を寄与額で見るとこうなる。
| 費目 | 増分 | 総増分への寄与 |
|---|---|---|
| Memory | +$1,627,661 | 約43% |
| GPU | +$1,440,000 | 約38% |
| その他合計 | +$740,936 | 約19% |
| 合計 | +$3,808,597 | 100% |
メモリの増分(約163万ドル)が、GPUの増分(約144万ドル)を上回る。1台のラックが約4百万ドル値上がりする、そのうち最大の塊はメモリが作っている。
部材費に占めるメモリの構成比も跳ね上がる。
- GB300:
373,939 ÷3,994,551 = 9.4% - VR200:
2,001,600 ÷7,803,148 = 25.6%
1ラックの部材費の 約4分の1がメモリ になる計算だ。1世代でメモリ比率が9%台から25%台へ、ほぼ3倍に膨らむ。
なぜメモリだけが+435%なのか
メモリ費目が5.4倍に膨らむ理由は、ひとつの要因ではなく重なりで説明できる。
- HBMの世代交代と搭載量増:Rubin世代のGPUは、現行のHBM3eからHBM4へ移行し、1GPUあたりのスタック数・容量が増える。HBMはDRAMの中でも単価が高く、容量増と単価上昇が掛け算で効く。
- メインメモリ層(SoCAMM/LPDDR5X)の増設:HBMの大容量を補完するメインメモリ層として、Micron主導のSoCAMM2モジュールがVera Rubin世代で本格採用される。HBMの外側にもう一段、高速LPDDR5Xの層が積まれる。
- DRAM需給の逼迫:そもそも足元のDRAM/HBMは供給がタイトで、ビット単価が上昇局面にある。容量を増やすほど、単価上昇とのダブルパンチで金額が膨らむ。
GPUが+57%にとどまる一方でメモリが+435%になるのは、「チップが速くなる」よりも「メモリを大量に積む」方向に設計の重心が動いているからだ。
「数量」の話と「金額」の話がつながる
このサイトでは先日、同じVera Rubin世代のメモリを 数量(ビット) の側から取り上げた。
そちらの記事の要点は、Vera単体CPUとVR NVL72を合わせたSoCAMM需要が 年間約80bn Gb に達し、スマホ向けLPDDR5の年間TAMにほぼ匹敵する、という韓国KISの試算だった。つまり数量の面で、AIサーバー向けメモリがスマホ市場と肩を並べる規模に立ち上がる。
今回のMorgan Stanleyの試算は、同じ現象を 金額(1ラックの部材費) の面から裏付けている。
- 数量:SoCAMM需要だけで年間80bn Gb(スマホLPDDR5に匹敵)
- 金額:1ラックの部材費でメモリが+435%、構成比25.6%(価格上昇の主役)
数量でも金額でも、Vera Rubin世代はメモリがボトルネックかつ主役になる、という同じ結論に別ルートで到達する。
投資の観点でのメモ
- メモリサプライヤーへの追い風:HBMとSoCAMM(LPDDR5X)の両方で搭載量が増える。HBMはSK hynix・Samsung・Micron、SoCAMMはMicron主導。AIサーバー1台あたりのメモリ売上が、世代交代で構造的に増える方向。
- NVIDIAの原価率:部材費が1台4百万ドル増える。これをどこまで価格転嫁できるか、あるいは粗利率を削るかは、VR200のASP次第。メモリ単価の上昇局面では、NVIDIA自身のメモリ調達コストも効いてくる。
- 前提への注意:上表はあくまでMorgan Stanleyの推計値で、VR200の最終仕様・搭載容量・調達単価が確定したものではない。メモリ単価が現在の逼迫を前提にしている可能性が高く、需給が緩めば金額は下振れする。逆に逼迫が続けば、メモリ比率はさらに上がりうる。
数字は動く。ただ「AIサーバーの価格を、GPUと並んでメモリが押し上げる時代に入った」という構図そのものは、数量・金額の両面から見て崩れにくい。